暫く読書から遠ざかっていたが、先月から司馬遼太郎が大村益次郎を主人公にした「花神」を読み返し、その勢いで高田屋嘉兵衛主人公の「菜の花の沖」を読み始めた。
先日、米子に行った折に本屋に立ち寄り、何を読もうかと物色していたら、水のみ百姓の子から船乗り、そしてロシアとの貿易商へと立身出世して行く話が面白そうなので買い求め読み始めている。
これまでも、坂の上の雲・竜馬が行く・世に棲む日日など幕末から明治開明期を舞台にした小説を読んできたが、本を読み進めていると、目の前にその映像が現れているかのごとく感ずるので、つい夜更かしをしたりしてしまう。
もちろん史実に基づいて作者が脚本したものであるから、詳細は分らないが、まるでその現場を見てきたかのような錯覚に陥る。
「菜の花の沖」も嘉兵衛が秋田で建造していた船が完成したところまで読み進めているが、時の回船問屋は全国の需要と供給の情報を常に集め、何処でどんな需要があり、それは何処で買うと安いのかを知っていた。まさに、情報戦を今のような情報網の無い時代に、自ら作った情報網で集め、巨額の利益を上げていたようだ。
翻って、自らの経営を振り返ると、これほど情報網が発達し知りたい情報はいつでも手に入れることができる時代に生きていながら、時折霧の中でさまよっているかのような不安に陥る。
当時の回船問屋の努力を思えば、まだまだ努力が足らんと、この本から教えられる。